やまぐち幕末ISHIN祭

スペシャルインタビュー vol.9

山口県では、平成30年の明治維新150年に向けて、観光キャンペーン「やまぐち幕末ISHIN祭」を展開中です。そうした中、今年(2016年)4月に、山口県観光スポーツ文化部が発足しました。その観光スポーツ文化部を束ねる小玉典彦(こだま のりひこ)部長にお話をうかがいました。

――― 山口県観光スポーツ文化部はどういう狙いで発足したのですか?

小玉部長:観光・交通・スポーツ・文化・国際など、交流を促進する施策を、観光を軸に一体的に推進することで、地域活力の創出につなげていこうという意図で発足しました。観光施策については、昨年12月に「おいでませ山口観光振興条例(※1)」を制定し、全県を挙げて観光に取り組んでいく体制を整えました。また、今年度、県における観光関係の予算は前年度の約2倍の規模となりました。そして、一般社団法人 山口県観光連盟が4月に観光庁の「日本版DMO(※2)候補法人」に登録されました。このように観光を強力に進めていく体制が整いましたので、今後はその体制を生かし、結果を出していかなければなりません。新たな部の部長として今、責任と同時に、やりがいを感じています。

――― 4月から観光キャンペーン「やまぐち幕末ISHIN祭」の第2章が始まりました。第2章のメインキャラクターとして登場した高杉晋作(たかすぎ しんさく)のイラスト。今風で、かっこいいですね!

小玉部長:ありがとうございます!やまぐち幕末ISHIN祭は、第1章では大河ドラマを活用した情報発信を行い、そのメインキャラクターはかわいらしい「松陰先生の妹 文(ふみ)ちゃん」でしたが、今年4月からイメージを一新し、颯爽としたものにしようと、高杉晋作を登場させたんです。また、日本の国を大きく変えた明治維新から150年。そのタイミングで、ふたたび維新を観光の面で起こす、旅行者の皆さんにリピーターになってもらう、という強い思いを持って、「維新 ふた旅」というサブタイトルも付けました。

――― 中核事業の「幕末維新やまぐちデスティネーションキャンペーン(DC)(※3)」を来年に控え、そのプレキャンペーンが今年10月から12月まで行われますね。DCのキャッチフレーズは「維新の風が誘(いざな)う おもしろき国 山口」。そのロゴなどに込めた思いを教えてください。

小玉部長:明治維新のように、観光も、時代やニーズなどにしっかり合わせて変革していかなければなりません。そのことを「維新の風」という言葉で表しました。「おもしろき国 山口」というのは、晋作の句(※4)と「山口県は面白い場所だよ」ということをかけたものです。山口県には、いろいろな観光地や観光の素材が県内各地にあり、一度の旅では満喫しきれませんし、同じ場所であっても再び訪れてじっくり味わっていただきたい。そうしたさまざまな観光素材があることを、DCのロゴでは、6色の風で表現しました。赤が歴史、緑が自然、だいたい色が食、濃いだいだい色が温泉、青が体験、紫がおもてなしを表しています。実は、風が広がっていく形は、晋作の颯爽感、力強く表現するため、私がこだわったところなんです。風が広がる形の中に、維新150年は区切りであるだけでなく、その先へと広げていきます、という思いも込めました。

――― 末広がりの風の形には、力強い思いが込められていたんですね!ところで、これまでも山口県のDCは行われていますが、2017年のDCの特徴はどんなことにあるのですか?

小玉部長:DCというと普通3カ月間なのですが、2017年の山口県のDCは9月から12月までの4カ月間行われることが、まず大きな特徴です。12月が終わると、次の日から2018年。まさに明治維新150年を迎える非常にいいタイミングでDCは行われます。県としては、DCを中心として、西日本旅客鉄道(JR西日本)と一層連携を深めようということで、先日、地域振興に係る連携に関する協定を結びました。JRの取り組みとしては近年、各地で観光列車が誕生して大きな話題となっていますね。そうした中、JR西日本の大きなプロジェクトとして、新しい豪華列車「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」が2017年春から中国地方を走り始めます。県内の停車駅はJR下関駅・岩国駅・東萩駅。特に下関は発着駅となりますので、盛り上がりを期待しています。そして現在製造中の豪華列車の装飾や食材などに、山口県産のものを使っていただこうと、積極的にアピールしているところです。また、SL「やまぐち」号もDCに合わせて客車を新しく製造されることになり、主要な駅もレトロ調に改修され、SLをけん引する機関車もD51(デゴイチ)が投入される予定です。

――― 新しい豪華列車の誕生などワクワクしてきます!たくさんの観光客の皆さんに来県していただけるよう2017年のDCをぜひとも成功させたいですね!

小玉部長:そうなんです。DCはJRグループ6社が連携して1つの県に集中してお客さんを呼ぼうという観光キャンペーンで、山口県のDCの本番は来年ですが、1年前の今年10月に、JRグループ6社の協力のもと、全国宣伝販売促進会議を行います。これは全国から旅行会社・JRグループ・雑誌社など約600人の方を招き、山口県の観光素材や取り組みなどの魅力をPRするものです。会議の後、泊まっていただき、県内各地のモデルコースなどへ実際に足を運び、食べて、見て、体験していただきます。各市町では、工夫をこらしたおもてなしも行います。そのとき、旅行会社などの皆さんに、どれだけ山口県の魅力を感じていただけるか。実はそれが、来年のDCの成功を大きく左右することになるんです。

――― なるほど。DCを成功させるには、まず、山口県への旅をPRしてくださる皆さんに、山口県の魅力をしっかりと体感していただくことから、ですね!

小玉部長:はい。昨年制定した観光振興条例では、3つのポイントを挙げており、その一つが「誇りと愛着を持ったおもてなし」です。今年10月の全国宣伝販売促進会議は、まさにこれを実行する絶好の機会ですから、県民の皆さんに、ぜひおもてなしの力を存分に発揮していただき、DCの成功に結び付けていただきたいと思っています。県民の皆さん自身が心の底から自信と誇りを持ち、それぞれの地域を宣伝することが、一番力があります!

――― そうですね。そこに住む人が誇りと愛着を持って伝えること。本当に大事ですね!また、やまぐち幕末ISHIN祭では「平成の薩長土肥連合(※5)」による事業展開も行われており、ユニークな企画だと思います。その魅力を教えてください。

小玉部長:今、国内の観光で、広域連携は各地で行われています。観光庁もインバウンドの受け入れを進めるに当たって広域連携を促しています。そうした中で薩長土肥連合が他の広域連携と大きく違うのは、隣り合う県との連携ではなく、地理的に離れた4県が、明治維新というひとつのテーマに基づいて連携したことです。今年1月からは、4県を巡るスタンプラリーも始まっています。抽選で豪華なプレゼントが当たりますので、ぜひたくさんの方に応募していただきたいですね。

――― 維新ゆかりの地を訪ねる絶好の機会ですし、4県全てでなくとも、例えば山口県在住の方は他にどこか1県を訪ねるだけでも応募できるんですね!ところで、やまぐち幕末ISHIN祭以外の取り組みとして「サイクル県やまぐち」というのが新たに始まったそうですね?

小玉部長:はい。国内だけでなくアジアなどでも今、サイクリングの人気が非常に高まっています。山口県の強みとして、道路が非常に整備されていること、自然も豊かで景色が良く、走っていて気持ちが良いことなどがあります。県内各地では近年すでにサイクルスポーツの大会が幾つか行われており、県全体で盛り上げようと、県では今年からシンボルイベント「All Yamaguchi Ride Festa」を始めます。今年の開催は8月、9月。プロ選手によるレースとして、藩庁門や県庁の地下駐車場、県庁敷地内の坂などをコースにしてタイムを競う「藩庁門トライアルinやまぐち」、パークロード(※6)を交通規制して行う「維新やまぐちクリテリウム」などを開催します。クリテリウムは、チームで作戦を立て、他のチームと駆け引きしながらコースを何周か回って順位を競う団体戦です。

――― スリリングで迫力があり、応援する側も見ごたえがありそうですね!!県庁を会場にしたタイムトライアルもユニークで面白そうです!

小玉部長:山口市の十種ヶ峰(とくさがみね)では、今シーズン日本で唯一となる国際レベルのマウンテンバイクダウンヒルのレースを開催します。他にも、プロから子どもまで楽しめるさまざまなサイクルスポーツのイベントを開催していきます。

――― 選手や応援する方たちも、スポーツだけでなく、温泉や食、観光も合わせて楽しんでいただけるという、新しい観光スポーツ文化部ならではの取り組みですね!他に力を入れている取り組みとしてどんなものがありますか。

小玉部長:山口県の特長の一つとして三方が海に開かれていることがあります。それはつまり、船での山口県への入り口が幾つもあるということです。しかも観光資源は県内各地にあり、山口県はクルーズ船誘致に関するポテンシャルが高い地だといえます。そこで県では、市町や民間団体と「クルーズやまぐち協議会」を作り、クルーズ船の誘致に本格的に取り組んできたところ、毎年着実にその寄港が増えています。クルーズ船のお客様は、移動にはバスやタクシーを使われ、食事やお土産の購入も寄港地などでされるので、一人当たりの経済効果が非常に高いことから、誘致に力を入れています。また、クルーズ以外にも、山口宇部空港開港50周年の機会を生かした観光物産フェアの開催や、利用状況が好調な韓国とのチャーター便の定期化に取り組んでいます。また、今年4月、村岡知事に台湾へ山口県観光のPRや連続チャーター便のトップセールスに行っていただきましたが、ぜひとも台湾との連続チャーター便を実現させたいと思っています。

――― 実現、楽しみにしています!ところで、小玉部長は県外のご出身だそうですね。県外出身の方から見て、山口県の魅力とは何でしょうか?

小玉部長:私は新潟県の出身で、山口県へは出張で来たことがあったのですが、初めての印象は、関門海峡を見て「こんなに九州が近いのか!まるで川のようだ」と思ったことです。また、以前抱いていた山口県のイメージは、明治維新とフグ。でも、実際に来てみたら、源平の壇之浦の戦い、室町時代の大内氏(※7)など、いろんな歴史があるんですね!あの立派な瑠璃光寺五重塔(国宝)をはじめとした大内氏の文化や、瀬戸内海側には立派なコンビナートもある。歴史的に奥が深く、食べ物にしても、瓦そば、長州黒かしわ等々。外郎(ういろう)も他県のものより絶対おいしい(笑)。それに忘れちゃいけないのが日本酒!国内で日本酒の生産量が増えているのは今、山口県だけ。私は日本酒といえば新潟という自負があったんですが、今や山口県の日本酒は海外へ行ってもすごい人気で、ふるさとを愛する身としては複雑ですが、やはりとてもうれしいです。

――― 他県の人にまだまだ知られていない山口県の魅力が、実はたくさんあるわけですね

小玉部長:歴史・自然・食・温泉・体験・おもてなしにしても、山口県にはたくさんの魅力があり、しかもそれらが県内各地に散らばっている。それが山口県の特長です。観光のニーズは年代・性別・国・人によってもさまざま。だからこそ、さまざまな魅力がある山口県には、どんな方にも合うニーズ、面白さがあります。「おもしろき国 やまぐち」へ、どうぞぜひ「おいでませ!!」。

※1 観光振興の理念を交流人口の拡大にとどめず、地域の元気創出による定住の促進へと高め、県民総がかりによる取組を推進する条例。
※2 日本版DMOとは、地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人(観光庁HPによる。http://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000048.html)。
※3 JRグループ6社と地元行政、観光事業者等が一体となって実施する広域的な観光キャンペーン。
※4 幕末の志士であり、また、三味線を愛し、歌や詩も作る風流人だった晋作。晩年には、「面白きこともなき世をおもしろく」と詠んでいる。
※5 明治維新ゆかりの4県(鹿児島県・山口県・高知県・佐賀県)による共同観光キャンペーン。
※6 県庁前からJR山口駅方面に延びる道路。初夏の新緑、秋の紅葉も美しく、「日本の道100選」に選ばれている。
※7 室町時代、山口を拠点に、北部九州や中国地方を中心として西国一の栄華を誇った大名。

小玉 典彦

山口県観光スポーツ文化部長。
新潟県魚沼市出身。平成11年4月、建設省(現 国土交通省)入省。平成25年2月、山口県総合政策部審議監 兼 土木建築部審議監に就任。その後、山口県産業戦略部審議監 兼 土木建築部審議監や、山口県産業戦略部次長、山口県商工労働部理事を経て、平成28年4月から山口県観光スポーツ文化部長。

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